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© Masaya Suzuki Architects

www.masayasuzuki.jp

House in Hiroo

広尾の家

Private Residence

都内にあるマンションの一室のフルリノベーションである。
戸建てのような設えにして欲しいというのが、最初の建主からの要望だった。それを受けてマンションの中に家を建てるという意識で設計を進めた。
住戸周囲には丁寧に手入れされた多様な樹木が生い茂り、都心とは思えないほど豊かな自然環境が広がっていた。3階の角部屋に位置し、北・東・南面に窓があり、どの窓からも目線の高さに見える樹木の緑が印象的であった。そんな住戸が持つ恵まれた環境を最大限に活かす計画を目指した。
そこで生まれたのは洗面と浴室である水回りコアを住戸の中心に配置し、その周りを回遊するプランである。建具を引くとワンルームのように全体が繋がり、風や光が抜けてどの居場所でも周囲の緑の恩恵を得られる。このプランは、裏動線と表動線が明確に分かれている。裏動線は、主寝室−ウォークインクローゼット−洗面−家事室−台所と、家事動線がコンパクトに完結しており大変便利である。表動線である玄関−広間・食堂の動線は、曲面の壁や斜めの壁などで構成することで、視線や体の動きを誘導し、光の陰影を美しく見せるようにと計画した。裏動線と表動線は水回りコアを介して抜けることも可能である。
また、アレルギー疾患をもつ建主に配慮し、サワラの無垢材や漆喰塗りなど自然素材を採用し、身体的な負担を軽減しながら、業務用の全熱交換器と高性能フィルターを導入し、きれいな空気を常に取り入れている。
このように周囲の環境を活かした使い勝手のよいプランとし、自然素材を全体に使用することで、時代が変わっても生活しやすい、戸建のような住まいになったのではないだろうか。
「リノベーション」ではなく「マンションの住戸に家を建てる」という意識や考え方は、設計においてだけはなく、長期的な持続可能性や不動産価値の観点からも可能性を広げられるのではないかと考えている。

CREDIT

設計

鈴木雅也建築設計事務所 / 鈴木雅也

置家具

hao&mei / 傍島浩美

撮影

鈴木研一

DATA

名称

広尾の家

所在地

東京都渋谷区

計画種別

改修

用途

専用住宅

施工面積

97.54㎡

設計期間

2022年10月〜2023年4月

施工期間

2023年5月〜2023年9月